公営ギャンブルといえど、ギャンブルはギャンブルです。なぜ廃止にならないのでしょうか。理由を説明するとともに、過去の廃止案や廃止事例を解説していきます。
公営ギャンブルが廃止にならないのはなぜか?
公営ギャンブルが廃止にならない大きな理由の1つが、公営ギャンブルの収益が公共事業や地方自治のための財源になっているからです。
競馬・競輪・ボートレース(競艇)・オートレースそれぞれの公営ギャンブルの収益は、運営費の他に、公共事業や地方自治のための財源として活かされています。
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例えば、中央競馬の場合は公式HPに以下のように明記されています。
100円の勝馬投票券のうち、約75円はお客様への払戻金に充てられ、残りの約25円が控除されます。この約25円のうち、10円が国庫に納付されます。これが第1国庫納付金と呼ばれるものです。残りの約15円がJRAの運営に充てられ、これにより各事業年度において利益が生じた場合には、その額の2分の1がさらに国庫に納付されます。これが第2国庫納付金と呼ばれるものです。
この国庫納付金は国の一般財源に繰り入れられ、そのうちの4分の3が畜産振興に、4分の1が社会福祉に活用されています。
引用:JRA
このように、中央競馬の収益の一部が国の財源になっています。
実際に、いくらぐらい納付されているのかというと、実際の国庫納付金のデータが公開されています。
引用:JRA
令和4年度でいうと、第1国庫納付金が約3200億円、第2国庫納付金が約410億円です。
さらに地方競馬の場合は、以下の通りです。
令和3年度の主催者収益金は、約158.3億円です。 この収益金は、地域の教育・文化の発展や社会福祉の増進、医療の普及やスポーツの振興、 都市計画その他公共施設の整備などに使われ、地域のくらしに役立っています。
引用:KEIBA.GO.JP
引用:KEIBA.GO.JP
これだけの金額が毎年、国の財源として確保されています。また、競馬以外の公営ギャンブルでも金額の違いはありますが、かなりの額が公共事業や地方自治の財源になっています。
その貴重な財源を確保するためにも、公営ギャンブルを簡単に廃止することはできません。
公営ギャンブルの過去の廃止案や廃止事例
ただ、過去には廃止案があったり、実際に廃止された事例もあるので解説していきます。
神奈川や千葉市が競輪撤退
2015年の3月末に、神奈川県では横浜市、横須賀市と共同で続けてきた競輪を廃止しました。また、千葉市でも2017年度末で競輪事業を廃止しました。
どちらも経営状況の悪化です。
いくら公営ギャンブルと言っても、運営にはお金がかかります。愛好者の高齢化やレジャーの多様化で車券の売り上げが減り収益が悪化しました。国の支援もなくなってしまうタイミングで、赤字が膨らむ一方だと判断し撤退をしたようです。
参考:日本経済新聞
東京都の後楽園競輪場の廃止
東京都の後楽園競輪とオートレースは、財政悪化をきっかけに1972年に廃止されました。
戦後の公営ギャンブルは、戦後復興の財源対策の応急措置として、国が地方自治体の開催を認められていました。しかし、ギャンブルの弊害がありました。
ギャンブル依存症による生活破綻、家庭の崩壊、青少年への悪影響、さらには、全国で八百長事件が頻発するなど社会問題化しています。
八百長の松戸競輪場騒擾事件をきっかけに、ギャンブルに反対する世論と運動がたかまりました。
その結果、後楽園競輪とオートレースは廃止され、大井競馬や京王閣競輪、多摩川競艇なども東京都は手を引きました。
参考:競輪草創期の史的考察
大阪での廃止
かつては大阪にも多くの公営ギャンブルの競技場がありましたが、今では競輪場と競艇場が2つしかありません。
ここまで数を減らしてしまった原因は、八百長トラブルです。
49年4月に住之江競輪場で八百長騒ぎが起こり、さらに20日後にも同じような騒ぎが同会場で再発。翌50年、兵庫県の鳴尾競輪場にて、競輪の運営を問われる大事件が発生してしまいます。
この「鳴尾事件」を契機に新聞各紙は競輪廃止論を社説で展開し、大阪府は全国で初めて運営するの競輪・競馬の全廃を決意、難色を強く示した岸和田市を除き、府下の公営競技場は廃止に至りました。
参考:競輪草創期の史的考察
オートレース発祥の地「船橋オート」の廃止
オートレースの聖地でもあり、「オートレース発祥の地」とも呼ばれた船橋オートは2016年に廃止されました。2013年度の入場者数は15万4千人と、ピーク時から比べ86%減といったような経営状況の悪化が原因です。
いくら伝統ある競技場だとしても、不況の波には抗えません。
参考:日本経済新聞